油圧空気圧講座 / 油圧空気圧の構造explain / architecture

油圧空気圧の構造

油圧空気圧の作動原理は17世紀フランスの物理学者ブレーズ・パスカルによって定義されました。

  1. 圧力は面に直角に作用する
  2. 圧力はあらゆる方向に等しい
  3. 密閉された容器内の一部に加えられた圧力は、同時に各部に等しい強さで伝わる
ブレーズ・パスカル

さらに17世紀後半になるとスイスの物理学者ダニエル・ベルヌーイによって流体力学の基礎となるベルヌーイの定理が発表され後の蒸気機関へと続く産業革命の地盤が確立します。

パスカルの原理の動作説明

解説(上図Click!ボタンで動作します)

  1. シリンダを押し下げることにより圧力が上昇します。
  2. それによりゴム風船はゴムの面に対し垂直に均等な圧力が掛かり膨張します。
  3. 図では書いてありませんがシリンダ内部と配管内部も同様に等しく圧力が掛かっています。

このパスカルの原理を応用し、少ない力で大きな力を得る技術として油圧空気圧は古くから利用されています。

シリンダへの応用例

解説(上図Click!ボタンで動作します)

  1. 左のシリンダを押し下げることにより圧力が上昇します。
  2. それにより右のピストン面に対し、垂直に均等な圧力が掛かりピストンを押し上げます。
  3. 右と左のシリンダ径に比例して右側のシリンダは重量物を持ち上げることができます。
  4. ただし、シリンダ径に反比例してストロークは減少します。

油圧空気圧機器のメリット

無重力空間でも油圧や空気圧は利用可能

400年もの昔から使われはじめ材質の変更や動力の進歩、制御方法が確立し今日の発展に欠かせない技術になりました。

もちろんそれよりもはるか以前より人類が利用している「てこの原理」や「車輪」なども少ない力で大きな力を得る為に広く利用されています。

しかし油圧空気圧のメリットはそれらと比較して以下の点で特化しています。

  1. 機器をコンパクトにまとめることが出来る。(てこの場合支点からの距離が問題になりやすい)
  2. 過負荷における機械的な損傷が少ない。(クラッチ等の磨耗や電動機の焼きつき等がない)
  3. 重力の影響が少ない。(どのような方向でも均一な力を出すことができる)
  4. 雰囲気を選ばない。(流体が密閉されているため、ほこりやチリなどに影響を受けにくい)
  5. 直線運動に強い。(回転運動を変換して取り出す必要がない)
  6. 無段階の制御がしやすい。(アナログ制御)

油圧空気圧機器のデメリット

パラボラアンテナなどは重量物かつ、低速度、高精度が必要なため油圧利用の典型例です

これら多くのメリットにより身近なところ(車のブレーキ)から深海、宇宙空間まで広く利用されるようになりました。

しかしメリットだけでなく当然デメリットもあり油圧空気圧の利用範囲はこれらを考慮して設計・制作します。

  1. 電動機などの動力を流体を介してエネルギーに変換するため効率が落ちる。
  2. 内部・外部とも完全に漏れをゼロにすることが難しい。漏れ=ロス
  3. 流体エネルギーを伝達するので速度に限界がある。
  4. 鉱物油を利用する液圧では火災の可能性がある。

このため力(トルク)は必要だが低速での速度制御が必要なところに多く利用されています。

上図のパラボラアンテナなどは重量物かつ低速度高精度を求められる為に油圧利用の典型例です。

主な使用機器

  1. 油圧ポンプ(エアーコンプレッサ)
  2. 動力を流体&圧力エネルギーに変換させます。
  3. 圧力制御弁(減圧弁、リリーフ弁など)
  4. 文字通り圧力を制御し必要なトルクや常に安全側になるよう規制するための機器です。
  5. 流量制御弁(絞り弁,流量調整弁など)
  6. こちらも文字通りですが主にアクチュエータのスピードを制御する機器です。
  7. 方向制御弁(電磁切換弁、手動切換弁、チェック弁など)
  8. 主にアクチュエータの進行方向を切り換える機器です。
  9. アクチュエータ(シリンダ、モーター、揺動モーター)
  10. 流体&圧力エネルギーを再度動力に変換させます。

以上が基本的な機器で上記の機器を組み合わせることにより制御を行うことができます。動力から流体エネルギーに変換し再度動力に変換することになります。

さらに、フィルター、アキュームレータ、クーラーなどの付属機器やその他センサー等を取り付け複雑でありながらも安全な制御を行っています。

油圧(液圧)と空気圧の違いは?

油圧ユニット例

油圧は高圧(力が要るところで利用) 空気圧は低圧(比較的少ない力で利用)だから空気圧は油圧に比べて安全と考えるのは大きな間違いです。小さなアクチュエータでも人体には及びもしない圧倒的な力をどちらも潜在的に保有しています。

推力より大きく異なるのは流体が圧縮するか圧縮しないかの違いで圧縮とはエネルギーの保存ですから仮にエアシリンダの取り付け配管内に残圧がありその配管が外れたとしますとシリンダ両側の力の均衡が破れ圧力が残っている配管側は大気圧に戻るまで爆発的な膨張を続けます。

system-design03

すなわちシリンダなどのアクチュエータが電源を切った状態でも稼動時と同じ圧力で急速に運動する可能性があります。右の画像はエアシリンダに設置した速度調整弁(スピードコントローラ)です。なぜシリンダに直接ねじ込んでいるのか理由がお分かりでしょうか?

油圧(液圧)は圧縮が無視できるレベルで同様の自体が起こっても1mm程度動けばエネルギーが0となりほとんど動きません。空気圧は圧力が低く油圧に比べて取り扱いが簡単、安全だと思い込むのは大変危険です。

ただし、液圧でも配管内に空気が含まれていたり後述する機器のアキュームレータを利用している場合、自重による落下など配管をはずす時は油圧でも空気圧でも十分に知識のある方が慎重に取り扱うことが必要です。

身近なところで利用されている製品やインフラにも圧力を利用した製品を見かけます。圧力釜は製品にもよりますがおおよそ2気圧掛かります。企業努力によって事故は限りなく少ない製品ではありますが取り扱いには注意が必要です。同じく身近で2気圧掛かる物の代表は水道です。どちらも同じH2Oを利用した加圧ですが後者を危険と感じたことがありますか?

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